発端は、Lúcia Leão が、蜷川幸雄シェークスピアの劇作品について、Working On Gallery にてエッセイを発表しました。その前置きを書くのに、シェークスピア復習・勉強中、 「ワー!坪内逍遥は、名古屋の旭丘高校出身!ご近所じゃないですか!?」と勝手に親しみが沸いたからです。 学生時代、坪内逍遥のシェークスピア訳には、とてもお世話になりました。しかしちょっと日本語が古めかしいので、内容をサクッと理解するうえでは、小学生の頃父に購入してもらった、講談社青い鳥文庫の子供向けシェークスピア作品集が好きでした。 「小説真髄」で、坪内逍遥は、ヨーロッパ側の作法に重点を置き、「小説・詩の書き方」を日本と比較して、日本文学の書き方を批評しています。ものすごく、欧米の文学科1年生が実践する論文のアプローチ方法ではないですか! その「小説真髄」を書くきっかけとなったのは、東洋的思想から導きだされた、ハムレットの「ガートルードは悪女である」という論文に、ホートン教授によって芳しくない成績を付けられたからだそうです。 シンプルに善悪や道徳心で物事を判断するのではなく、色々な方向から思想を展開していくのが欧米式。(現代の英米教授たちは、「ガートルードは悪女である」って面白がって、もっと東洋式思想を読みたいと思う方々も多いと思うのですが。) 坪内逍遥、興味深いなと思うことは、比較文化に関心を持った素直単純な学者だったのか、英米式に書いて認められてやるとエゴが強かった作家なのか。 さてさて、 日本近代文学の歴史は、このYouTube番組がとてもわかりやすく説明していますよ! 私の好きな、正岡子規のことも、最後の方でお話されています。 正岡子規は、写実主義(写真を撮るようにリアルに俳句を詠む)者です。自分で体験して、その話や感情を忠実に書くという手法です。なんでも体験したいタイプだったようで、病気にもかかわらず遼東半島へも出向いています。 だから、空想が入る、ちょっとドリーミーな感じの和歌は苦手なのかと再度納得しました。 「小説真髄」で気になったところは、 ポエトリイは我が国の詩歌に似たるよりも、むしろ小説に似たるものにて、専ら人世の情態をば写しだすを主とするものなり。我が短歌、長歌のたぐひは、いはゆる未開の世の詩歌といふべく、決して文化の発暢せる現世の詩歌とはいふべからず。かくいへばとて、皇国歌をいと拙しとて罵るにあらねど、総じて文化発達して人智幾階か進むにいたれば、人情もまた変還していくらか複雑とならざるべからず。 (ここで言う、ポエトリイは、オデッセイなどの欧米クラッシック詩作品。) 和歌を「未開の世の詩歌」言い切ったところ! フェノロサが、日本文学を危惧した心わかる気がします。 日本の和歌は、写実主義に寄り添う感じの、自然を描写した作品も多いですし、善悪などの結論にいたらない複雑な恋の歌もあります。 万葉集は、文語体(漢字・万葉仮名)で書かれていても、農民や平民が詠っていたりするので、口語体のような、写実主義要素も多いと思います。 シェークスピア劇の一文に出てきそうな、和歌もあります。坪内逍遥の好きなシェークスピアも写実主義には絶対忠実とは言えないと思うのです。 This goodly frame, the earth, seems to me a sterile promontory, this most excellent canopy, the air, look you, this brave o'erhanging firmament, this majestical roof fretted with golden fire, why, it appears no other thing to me than a foul and pestilent congregation of vapours. What a piece of work is a man! how noble in reason! how infinite in faculty! in form and moving how express and admirable! in action how like an angel! in apprehension how like a god! the beauty of the world! the paragon of animals! And yet, to me, what is this quintessence of dust? ― William Shakespeare, Hamlet このハムレットの抜粋も、修辞法を使って、物事を言い換えながら、テンポよく書かれています。 坪内逍遥、とっても気になっています。 坪内逍遥「小説真髄」
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June 2024
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